ナンセンスの博物誌
お題「披露する機会がないけど語りたい薀蓄(うんちく)教えてください。」
小学校低学年の頃、1日に往復するくらい図書館に通っていた時期があった。
何を読んでいたのか、多分絵本や字の大きい本だったと思うのだけれど、残っているのは通ったという記憶だけである。
小学校の図書館に「ナンセンスの博物誌」という古い本があった。今調べたら、1961年発刊だそうな。40代の私が当時手に取った時点で、すでに古かったわけか。
本の内容は迷信など誤った世間の常識を理論で否定するといったもので、これに関しては、そうだった気がするという記憶だけでなく、鳥の子育てのエピソードも覚えている。これが、披露する機会がないけど(前段後段含めて)語りたい薀蓄。
親鳥が卵を温めるのは、産卵後、胸のあたりにできた炎症を殻の冷たさで冷やしているから。ひな鳥に餌を与えるのも、口中に見える赤色に魅かれる習性があるから。
ということで、親鳥に愛情はない。
今思うと、これを小学校の図書館に置いておくというのは中々ロックだろう。でも、これも含めた諸々のおかげで私はスクスクと育ったから、間違ってはいなかったのでしょう。
なにしろ、当時これを読んだ私が、むしろそう出来ている自然の仕組みに強く感動を覚えたことを覚えている。素直な奴だったんだな、お前。ちょっとズレてるのは変わらないけど。
その後、「ナンセンスの博物誌」は大のお気に入りで、すでにボロボロだったのを古書配布で譲り受けて自室の本棚に長く並べていた記憶がある。
でも今、Web検索で表示される表紙絵がどうもピンと来ない。記憶の中の「ナンセンスの博物誌」はぼんやりしていて、でも画面に表示される「ナンセンスの博物誌」とは何となく違うと感じる。
記憶の中の「ナンセンスの博物誌」は、俺だけの本になっている。
俺だけの本は、突き詰めると消えて思い出すこともできなくなる。このままぼんやり記憶にだけ持っておこう。